診療の特徴
こころとからだの調和を
私たちのこころとからだは、普段お互いに調和を取り合っています。
例えば、こころが疲れている時に、しっかりと睡眠を取ることで、翌日気持ちがスッキリ晴れるなど、こころの疲れを癒してくれます。またからだが疲れている時、リラックスする音楽を聞いたり、家族と話をしたり、ペットと触れ合うことなどにより、喜びや慈しみのこころがからだの疲れを癒してくれるでしょう。
しかし、ストレスがとても大きなものであったり、長くストレスにさらされ続けると、このこころとからだの調和を取る機能が働かなくなってしまい、その結果、睡眠を取っても気持ちが晴れない、憂うつな気分が続く、不安な気持ちが取れないなど、こころの症状が出現するようになります。また睡眠自体が取れなくなり、不眠が続く、食欲がない、頭痛、腹痛など、様々なからだの症状も出現します。
こころの病の多くが、からだの症状を伴います
例えば、うつ病では睡眠障害はほとんどの方に現れる症状で、80~85%の方で不眠を認め、10~15%の方で過眠を認めます。
他にもパニック症の方では、動悸、息苦しさ、嘔気、めまい感などのからだの症状を認めます。
このようにこころの病の多くが、からだの症状を伴うのです。
こころとからだの調和を取り戻すために、治療は多面的アプローチを取ります
それでは、こころとからだの調和がとれた健康な状態をどう取り戻すのでしょうか?
そのためには、こころとからだの不調和を維持している要因などを明らかにして、その見立てに基づき、治療は多面的なアプローチを行います。
例えば、うつ病の方の場合、こころと脳の関係から、お薬がこころの痛みやからだの症状を和らげてくれるでしょう。また、ストレスとなっている出来事とその捉え方(認知)などに着目して、別の見方などを話し合うことで、こころの痛みが和らぐかも知れません。人と人との関係に注目し、その関係性を調整することで、ストレス要因が減るかも知れません。リラクゼーション法は、からだの症状を軽減してくれるでしょう。
このように多面的なアプローチを取ることで、困りごとがよりすみやかに改善するでしょうし、お薬が必要な場合でも、薬の量を抑えることができます。
働く人のメンタルヘルス
- 適応障害
- 抑うつ状態、不安抑うつ状態
- うつ病
- 双極性障害(躁うつ病)
- パニック症(パニック障害)
- 社交不安症(社交不安障害) など
職場の対人関係や、業務負担などにより、時にこころとからだの変調をきたすことがあります。他にも、その方の特性やおかれている環境などにより、ストレスへの対処が困難となる理由は多様です。
10年以上複数の事業所において嘱託精神科医として働く人の立場にたち、一次予防(セルフケア・職場環境改善による発症予防)から、二次予防(早期発見・早期治療)、そして三次予防(休職者の職場復帰支援など再発予防)、更には「事業所におけるメンタルヘルスケア体制づくり」にも関わってきました。
上司や人事、産業医など職場側への働きかけ方の具体的なポイントなど、実際に事業所で産業医をしてきた経験を診察に活かし、皆さまが健康に働き続けるためのお手伝いをしてまいります。
もの忘れを心配されたとき
- 軽度認知障害 MCI
- アルツハイマー型認知症
- レビー小体型認知症(レム睡眠行動障害)
- 脳血管性認知症 など
認知症はご本人だけでなくご家族にとっても、幸せで豊かな生活を送るために大切な問題です。
当院の特徴は、詳細な認知機能の検査が行えるため、軽度認知障害など認知症と診断がつかない方や、ごく初期の認知症の方に対しての診断と治療について、対応ができる点です。また、認知症に伴う周辺症状と言われる、性格変化や行動などの問題に対しても専門治療を行います。
認知症疾患医療センター機能を有する複数の病院に勤務してきた経験を活かし、介護・福祉サービスとも連携を取りながら診療させていただきます。
最近、物忘れが気になる方はご相談ください。
画像検査について
近隣の徒歩圏内にある連携医療機関にて頭部MRI検査を依頼しています。
当院で検査日の予約ができ、患者様には検査日のみ連携医療機関を受診し検査を受けていただき、検査結果は当院でご説明いたします。
上記検査だけでは診断に至らず更に脳血流検査など追加検査が必要と思われる場合、その必要性をご説明した上で、ご希望の方は連携医療機関に速やかにご紹介し、脳血流検査の結果も当院でご説明いたします。
また、もの忘れの症状が認知症によるものなのか、それとも加齢によるものなのかご心配な方もどうぞご相談ください。
認知症のタイプによっては、必ずしも「もの忘れ」から始まらないものもあります
例えば、レム睡眠行動障害は睡眠中に攻撃される・追いかけられるなどとても不快な夢をみて、その間大声で寝言を言ったり、殴る・蹴るといった暴力的な動作をご本人が知らぬ間にとり、その結果、本人や一緒に寝ている方が打撲など怪我をしてしまうなどの特徴があります。
レビー小体型認知症では、このレム睡眠行動障害が高率に出現することがわかってきました。この障害が、レビー小体型認知症の他の症状よりも数年も先立って出現してくることもあります。
このように、必ずしももの忘れから認知症の症状が始まらない場合もありますので、気になる症状がありましたらどうぞご相談ください。
不安から解放されるために
- パニック症(パニック障害)
- 社交不安症(社交不安障害)
- 全般不安症(全般不安障害)
- 強迫症(強迫性障害) など
不安は、将来起こりえる危険を知らせてくれるシグナルであり、誰にでも備わっている大切な感情です。私達はこの不安を感じることで将来の危険に対処して生活を送っています。
一方、不安が困りごとになる時は、不安が強すぎたり、不安が長く続いてしまい、コントロールができない状態にある場合です。
「不安が強すぎる状態になる前に止めることができる」
「不安が強すぎる状態になっていたら、または不安が長く続いてしまい自分でコントロールできない状態になっていたら、その不安を自分でコントロールして元に戻すことができる」
「考え方や振る舞い方などを工夫して不安と上手に付き合える」
など、不安への対処法を手に入れることができれば、生活に支障をきたさずに過ごせるでしょう。
不安が困りごととなっている要因を明らかにして、具体的な対処法を相談していきましょう。
うつがつらいとき
- うつ病
- 双極性障害(躁うつ病)
- 適応障害 など
「うつ」というと、一般に憂うつで気分が沈んでいるという印象をもちますが、他にも楽しみや喜びを感じられない、気力が出ない、頭がうまくまわらないなどもうつの状態です。またからだの症状として睡眠がうまく取れなくなってきます。寝付きが悪くなってくる、何度も目が覚める、朝はやく目が覚めてしまうようになります。逆に起き上がるのがつらくて、寝てばかりになる方もいます。疲れやすい、食欲がない、または食べ過ぎてしまうなど様々なからだの症状も伴います。
更には、寒い時期にはうつ傾向になるなど季節性のうつを呈する方もいらっしゃいます。
うつ病の方の治療と、躁うつ病の方のうつ状態への治療は、共通するところも多くありますが、一方でそれぞれの特徴をふまえてうつの状態をコントロールすることが大切です。
また、うつ病の方、不安症の方それぞれが、うつや不安の症状を併存しやすいことも知られています。
うつの状態が続きますと、意欲がもてず、こもりがちになり活動量が少なくなっていきます。思うように行動ができないことから更に気分が落ち込んでしまうというような悪循環が、うつの症状を更に悪化・持続させてしまいます。
こころの風邪と言われた「うつの状態」は、引き始めが肝心です。悪循環の初期の段階でご相談いただければ、よりはやくそこから抜け出すことができるでしょう。
女性のメンタルヘルス
- 月経前不快気分障害:PMDD
- 月経や妊娠・出産に関連するうつ病、不安障害
- 更年期障害に伴う抑うつ、不安 など
女性には特有の様々な役割がありますが、それらの役割が重なった時(子育て・介護・仕事・家事など)、周囲のサポートがうまく得られなかった時、あるいは役割の変化にうまく適応できなかった時などにストレスを感じることがあります。それらに加え女性ホルモンの変化も一時的変調をきたす一因となるでしょう。
イライラや抑うつ気分、涙もろくなるなど変わりやすい気分が生理前の一定期間限定に生じる場合、月経前不快気分障害の可能性があります。パートナーや子供、職場の同僚・上司、友人などとの人間関係をギクシャクさせてしまうことが多く、しかし相手方には理解されず悩まれたり、あとで後悔しご自身を責めてしまったりすることが多いのではないでしょうか。ご本人の意思の問題ではなく、ホルモンの変化に伴い変動する気分の問題です。
月経前不快気分障害の方は、薬物反応性が高いことが多く、治療は大きなサポートになることと思います。
からだの症状を中心として困っている方
- 慢性疼痛 過敏性腸症候群 自律神経失調症 など
例えば、内科や整形外科などで検査をしても原因がはっきりしない痛みが続く、あるいは痛み止めなどを用いても改善が思わしくなく困っている方は多いことでしょう。この慢性疼痛は時に心理的要因(こころ)と密接な関連があると言われています。
ストレスがたまるとじんま疹がでる、血圧が不安定になる。また糖尿病の血糖コントロールとストレスの関係もよく知られています。
このようにからだの症状がうまくコントロールされない時など、こころという視点からのアプローチも役立つかも知れません。
- 心気症(健康不安) など
一般に年齢を重ねると、なんらかのからだの不都合が増えてくるでしょう。そのようなからだの変化に対して、何か重大な病気が隠れているのではないか、またはすでにかかってしまっているのではという不安が続いてしまう場合があります。
すでに他科の医療機関を受診されていることが多いので、ご相談・ご紹介いただければと思います。